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Vol.01 絹

Vol.01  絹

絹と長く付き合うコツ


絹は着るたびに汗や皮脂で酸化し、

生地の風合いがやわらかくなります。

しかし一方で生地の強度は弱くなっていることを

ご存知でしょうか?


お客さまの着物によるカスタムオーダーを

受けるたびに耳にするのは

「1・2度しか着てないのでそのまま数十年、

箪笥に収納しておいた」という言葉です。




先日お母様の大島紬で「刺し子ジャケット」を

作りたいとご注文にいらした

お客様のお召し物ですが、

手にした時に少しざらついた感触でした。

経年劣化と収納の不備で

カビが付着し生地は弱っていました。


大島紬は染色の段階で鉄分の多い酸性の

泥に浸し美しい色艶を引き出すのは

皆様の知るところですが、

この工程は同時に絹の繊維に

負荷をかけて酸化させているのも事実です。


近年日本列島は亜熱帯化し湿気の多い

蒸し暑い夏が長く続きます。

そういった環境下でさらに風通しの悪い部屋の

和箪笥に50年近く収納したままの大島紬。


残念ですがすでに劣化が始まり、

ご注文をお受けできませんでした。




着物にはその家族の歴史が必ず背景にあります。


「これは長女の入学式に併せてあつらえた着物」

「これは夫が鹿児島に赴任した時、はじめて夫婦で

奄美大島まで出かけて求めた品」と思い出が

次々と走馬灯のようによみがえるのでしょう。

どなたも着物を久しぶりに手にした時、

愛おしく撫でていらっしゃるのが印象的です。


思い出の詰まった着物を、その思い出とともに

布が息を吹き返す作業をお手伝い出来ることを

ありがたいと日々思っています。


出来るだけお客様のご要望に寄り添いたいと

試行錯誤いたしますが、劣化したお召し物は

擦れがいち早くきてしまうため、

残念ながらお仕立てするのを

お断りしてしまうことになります。

そうならないためにも、大切なお召し物は

乾燥する季節に風通しする。

湿気の少ない状態で収納する。

最低この2つの事だけは気にかけて

おいてくださることをおすすめします。


お母様から着物を預かっていらっしゃる方、

日々多忙な生活の中でも

時々思い出してくださると幸いです。